8 評価・改善

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評価・改善

公務において、提供する行政サービスや実施する事業の効果を「評価」し、その結果に基づいて「改善」を重ねていくことは、持続可能で質の高い行政運営を実現するために不可欠なプロセスです。評価には、客観的なデータ分析、住民の声の抽出、事業の達成度検証など、多岐にわたる専門知識と時間が必要です。また、改善策の立案には、創造性と実現可能性の両面からの検討が求められます。

生成AIは、この「評価・改善」のサイクルにおいて、データからの知見抽出、課題の特定、改善策の提案、報告書の効率的な作成を強力に支援します。AIを「客観的な評価者兼アイデアメーカー」として活用することで、公務員はより迅速かつ的確に事業の成果を把握し、エビデンスに基づいた改善策を立案し、区民にとってさらに価値の高い行政サービスへと繋げることができるようになります。

①事業評価の補助

既存の事業や施策の達成度や効果を評価する際に、関連データを分析し、評価報告書の骨子作成や改善点の抽出を支援します。

プロンプト例

事業実績報告からの達成度評価

あなたは〇〇区政策評価担当者です。以下の『令和6年度〇〇事業実績報告書』のテキストデータと、事業開始時に設定された目標値を元に、当該事業の目標達成度を評価するレポートの骨子を作成してください。特に、達成できた点、未達成の点、そしてその理由について客観的に記述してください。[ここに令和6年度〇〇事業実績報告書のテキストと目標値(例:参加者数1000人、満足度80%など)を貼り付け]

区民満足度調査結果の分析と課題抽出

あなたは〇〇区の広聴担当者です。以下に提供する『令和6年度区民サービス満足度調査』の自由記述回答データを分析してください。特に、『不満』や『改善要望』に特化した意見を抽出し、その内容を5つ程度の主要なカテゴリに分類し、それぞれのカテゴリにおける具体的な課題と頻出キーワードを要約してください。[ここに区民サービス満足度調査の自由記述回答テキストを大量に貼り付け]

費用対効果分析のための情報整理

あなたは〇〇区の財政担当者です。以下の『〇〇事業の事業費と実績データ』を元に、簡易的な費用対効果分析を行うための主要な指標(例:一人当たりのコスト、達成率とコストの関係など)を提案し、その指標に基づいた簡易的な評価コメントを作成してください。[ここに事業の総費用、参加者数、削減できたコストなどの定量データを貼り付け]

②改善策の立案支援

評価結果に基づいて、具体的な改善策をブレインストーミングしたり、複数の選択肢から最適なものを検討したりする際に、AIがアイデアを提供します。

プロンプト例

課題解決のための改善策提案

あなたは〇〇区子育て支援課の職員です。『子育て支援情報の把握の難しさ』が、区民アンケートで主要な課題として挙がりました。この課題を解決するための具体的な改善策を3つ提案してください。デジタルツールの活用、相談窓口の改善、広報方法の見直しなど、多様な視点からアイデアを出してください。

業務プロセスの効率化提案

あなたは〇〇区総務課の職員です。現在の『職員の研修申請・承認プロセス』が非常に煩雑で時間がかかるとの指摘があります。このプロセスをより効率的かつ簡素化するための改善策を3つ提案してください。AIツールの導入、ワークフローシステムの活用、承認階層の見直しなど、具体的なアプローチを含めてください。

市民参加型事業の活性化アイデア

あなたは〇〇区地域振興課の職員です。『地域コミュニティ活性化のための市民参加型事業』の参加者が伸び悩んでいます。この事業の参加者を増やすためのユニークな改善策を3つ提案してください。若年層や子育て世代の参加を促す視点も盛り込んでください。

③改善計画・報告書の作成補助

立案された改善策を具体的に行動計画に落とし込んだり、評価結果と改善策を統合した報告書を作成したりする際の下書きを支援します。

プロンプト例

改善アクションプランの骨子作成

あなたは〇〇区の事業担当者です。先日の事業評価で明らかになった『〇〇(特定の課題)』を解決するためのアクションプランの骨子を作成してください。具体的に、課題の特定、目標設定、具体的な実施内容、担当部署、スケジュール、KPI(重要業績評価指標)の項目を含めてください。

事業評価・改善報告書の下書き

あなたは〇〇区の企画課職員です。以下の『令和6年度〇〇事業評価レポート』と、それに対する改善策の合意内容を元に、区長に提出する『事業評価・改善報告書』のドラフトを作成してください。報告書は、事業概要、評価結果(定量的・定性的)、課題、それに対する改善策、今後の展望のセクションを含み、簡潔かつ論理的に記述してください。[ここに事業評価レポートの要約と、合意された改善策のリストを貼り付け]

PDCAサイクル報告書テンプレートの提案

あなたは〇〇区の組織改革担当者です。区内の各部署が事業のPDCAサイクルを効果的に回すための『PDCA報告書テンプレート』の項目案を提案してください。計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)の各フェーズで、どのような情報を記載すべきか、具体的な項目例を挙げてください。

評価・改善における安全な活用のポイント

  • 客観性と公平性の確保: AIは中立的なツールですが、学習データやプロンプトの設計によっては、特定の結論に誘導される可能性があります。評価においては、AIの分析結果が客観的で公平な視点に基づいているかを常に確認し、都合の良い結果だけを採用しないように注意してください。多様な視点からのデータを取り入れ、バイアスを排除する努力が不可欠です。
  • 人間の洞察と経験の重視: AIはデータからパターンを見つけたり、既存の知識を組み合わせたりすることは得意ですが、データの裏にある区民の感情、複雑な社会背景、そして過去の行政経験に基づく洞察は、依然として人間が最も得意とするところです。AIの分析結果と提案はあくまで「参考情報」として捉え、最終的な評価や改善策の決定には、必ず公務員自身の専門知識と経験、そして倫理観を反映させてください。
  • 機密情報・個人情報の取り扱い: 評価・改善の過程で、区民の個人情報や、区の内部における機密情報(例:職員の評価、未公開の財政情報)を扱うことがあります。これらの情報はAIに入力する前に厳重に匿名化・仮名化するか、情報漏洩のリスクが極めて低いセキュアなAI環境でのみ取り扱ってください。
  • AIの「ハルシネーション」による誤情報: AIが事実に基づかない情報や、もっともらしいが現実離れした改善策を提案する可能性があります。特に、数値データや具体的な施策に関する記述については、ファクトチェックを徹底し、実現可能性を現実的に評価することが重要です。

問題

問題1 地域交流イベントの評価レポート骨子作成

あなたは、〇〇区役所の政策評価担当職員です。今、あなたの部署では、地域交流イベントの有効性を評価する必要があります。

以下の情報が提供されています:
・事業名:「地域ふれあいフェスティバル2024」
・目標値:来場者数3,000人、満足度80%以上
・実績値:来場者数2,200人、満足度76%
・主な事業内容:地元団体による出店・ステージ発表、子育て支援ブース設置、防災体験コーナー など

このデータをもとに、生成AIに事業評価レポートの「骨子(アウトライン)」を作成させたいと考えています。AIに依頼するためのプロンプトを記述してください。


解答プロンプト例

あなたは〇〇区の政策評価担当者です。以下の『地域ふれあいフェスティバル2024』に関する事業実績と目標値に基づいて、事業評価レポートの骨子を作成してください。特に、目標達成度(来場者数と満足度)、達成できた点、未達成の点、そしてその要因を客観的に分析した上で、改善の方向性についても示唆を含めてください。

【提供情報】

・目標来場者数:3,000人 → 実績:2,200人
・目標満足度:80%以上 → 実績:76%
・主な内容:出店・発表、防災体験、子育て支援ブース

生成AIの回答例

以下が『地域ふれあいフェスティバル2024』事業評価レポートの骨子です。

『地域ふれあいフェスティバル2024』事業評価レポート(骨子)

【1. 事業概要】
目的:地域住民の交流促進、防災意識の向上、子育て支援の周知
実施内容:出店・ステージ発表、防災体験コーナー(起震車、初期消火訓練等)、子育て支援ブース(相談・遊び場)

【2. 評価指標と実績】
・目標来場者数:3,000人 → 実績:2,200人(達成率 約73%)
・目標満足度:80%以上 → 実績:76%(未達)

【3. 達成できた点】
・子育て世代や高齢者など、幅広い世代の参加を確認
・防災体験コーナーが特に盛況で、防災意識の向上に一定の効果
・子育て支援ブースの来場者が増加し、後日の区の相談窓口への誘導にもつながった

【4. 未達成の点とその要因】
(1)来場者数の未達
・広報媒体が区報・Webサイト中心で、SNSや地域コミュニティとの連携が弱かった
・当日午前の小雨により、外出を控える層が一定数発生
・会場が駅から遠く、アクセス利便性に課題(移動支援なし)

(2)満足度の未達
・会場内のブース配置が分かりづらく、目的の場所を見つけづらいという声が多数
・飲食・休憩スペースの混雑、特にピーク時の席不足
・自由記述には「事前情報が少なかった」「案内が不十分だった」といった不満も見られた

【5. 改善の方向性と提案】
・広報手法の多様化(InstagramなどSNSの活用、地域商店や子育て関連施設とのチラシ連携)
・臨時シャトルバスの運行や駅からの誘導サインの強化
・会場内案内の改善(マップ配布・表示板の設置・スタッフの配置)
・休憩スペースの増設と分散配置による快適性向上
・事前にイベント情報を視覚的にわかりやすく発信(特に子育て世代向け)

【6. 総括】
事業の実施により、地域交流と一部の政策目的(防災・子育て支援)は一定の成果を上げた。一方で来場者数と満足度は目標未達であり、主に広報不足・会場運営・アクセス環境に改善の余地がある。今後の開催に向けては、広報の戦略的展開と、会場設計・運営面の見直しを通じて、さらなる地域参加と満足度向上を目指す必要がある。

問題2 住民の声に対する改善策立案

あなたは〇〇区福祉課の職員です。高齢者からの苦情で「デジタル手続きが難しい」との声が増えており、サービスのアクセシビリティ向上が課題となっています。この課題に対して、生成AIを用いて改善策のアイデアを出してもらうためのプロンプトを作成してください。幅広い視点から具体的な提案が得られるよう工夫してください。


解答プロンプト例

あなたは〇〇区福祉課の職員です。高齢者から寄せられた「オンライン手続きが難しく、利用を断念した」との声を受け、区としてアクセシビリティの改善が急務となっています。この課題に対して、生成AIとして、高齢者にも優しい行政サービスの提供に向けた具体的な改善策を3つ提案してください。対面支援の充実、アナログ手続きとの併用、デジタル支援員の配置、UI改善など多角的な視点からアイデアを挙げてください。

生成AIの回答例

以下に、高齢者にも優しい行政サービスの提供に向けた具体的な改善策を3つ、多角的な視点から提案いたします。


  1. 対面&電話による「デジタル代行支援窓口」の設置
    概要:区役所や出張所に、職員または「デジタル支援員」が常駐し、オンライン申請を一緒に操作したり、電話越しに代行入力を行ったりできる専用窓口を設置します。
    期待される効果:オンライン化による「排除感」の解消、高齢者が手続きの仕組みを理解するきっかけに
    具体例:毎週「スマホ・オンライン申請なんでも相談日」を設定、電話1本で手続きの一部を済ませられる「音声対応申請補助」
  2. 「アナログ申請」と「オンライン手続き」の選択肢の明示と平等性の確保
    概要:全ての行政手続きにおいて、「郵送・窓口・電話」などのアナログ手段を明記し、オンライン手続きと同じ水準で利用可能にします。
    期待される効果:オンラインが苦手な人でも「取り残されない」という安心感、利用者の多様性を尊重した対応
    具体例:通知ハガキやWebサイトに「紙で申請できます」「電話で予約できます」などの一文を必ず記載、オンライン申請開始と同時に郵送用の申請用紙も配布
  3. シニア向けに最適化された「やさしいUI・UX設計」と生成AIの活用
    概要:大きな文字、シンプルな操作、音声読み上げ、チャット形式での入力支援など、高齢者フレンドリーなUI/UXを導入。あわせて、生成AIによる「対話型ナビゲーション(例:ChatGPT活用)」を設置します。
    期待される効果:オンライン手続きの心理的ハードルを大幅に低下、ミスや途中放棄を防止し、完了率を向上
    具体例:「申請ナビ(仮称)」:Q&A形式で申請内容を導いてくれるAIチャット、音声読み上げ+文字拡大機能つきの「かんたん申請ページ」
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